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この口を裂いてくれ
この目を潰してくれ
この手を縛ってくれ
お前を泣かせる前に
お前を、傷つける前に
「真田くん、今日、どれくらいで終わりそう？」
お前の声は、いつも微かに震えている。
瞳は不安気に揺れ、どことなく、脅えたように見えてしまうのは
俺の考えすぎなのだろうか？
「何時になるかわからん。今日は先に帰れ。」
「そう…」
小さくつぶやく声。
その声色に、まだ自分を好きで居てくれているのだと安心する反面
本当は、一緒に帰れるのだ、と
待っていて欲しいのだ、と
本音が漏れそうになってしまう。
「わかった。うん、わかったよ。」
泣きそうな笑顔で俺を見つめるに
安堵を覚えてしまう俺は可笑しいだろうか。
もっと、俺のために悲しんで欲しい
そう思ってしまう俺は、可笑しいのだろうか。
そして、彼女が自分以外の男と笑っている姿を見るたびに
心の奥底から溢れ返ってくる焦燥。
その男を殴り飛ばし、
その横で泣き叫ぶ彼女が見たい。
俺の下で歪む彼女の表情を見たい。
そんな穢れた思想ばかりが脳内を広がり、手を付けられなくなってしまったら
きっと、俺と彼女の関係は終わってしまう。
「真田くん？」
俺を見上げる黒い瞳。
「難しい顔してる… 何かあったの？」
全てお前のせいだというのに…
否、今まさに俺は
お前を傷つけたい、俺のために傷ついて欲しい
お前の上に跨り、お前の歪んだ表情を見たいと
そんな妄想に駆られているというのに
それでも俺の身を案じる清き心が憎い。
「…なにもない。俺は行くぞ。」
「あ、うん… 部活、がんばってね？」
返事をせず、彼女に背を向ける。
背中に刺さる、小さな針のような傷み。
それが煩わしく、心地よい。
誰も居なくなった部室で、鉛の塊を持ち上げては下ろし、それを繰り返す。
腕の筋肉が張り、額に汗がにじむ。
煩悩を取り払おうなど、そのような精神ではない。
暗闇の中に居ると落ち着く。それだけだ。
冬も近く、日が落ちるのも早い。
外にはうっすらと月が昇っている。
「真田くん？」
鈴のような声。
俺は腕の動きを止め、振り返った。
暗闇に慣れた俺の瞳が捉えるのは、強張った笑顔を見せる。
「どうした」
静かに、彼女に尋ねる。
目線を自分の手元に戻し、相変わらずダンベルを上下させた。
「…見てて、いいかな？」
「今日は帰れと言ったはずだ。」
「ご、ごめんなさい…迷惑だったら、帰るから…」
掌からダンベルが滑り落ち、ドンッと音がする。
重い打音に続く沈黙。
俺は重たい体を持ち上げ、彼女へと振り返った。
「……真田、くん？」
部室の窓から差し込む月明かりに照らされる彼女の不安気な表情。
彼女に詰め寄り、壁に追い詰める。
脅えながら後ずさりをする彼女の逃げ場を遮断するように
彼女の両手首を掴み、壁に押し付けた。
の唇から小さな悲鳴が漏れる。
体に走る電気。もっと聞きたい。この声が、もっと聞きたい。
ああ、この耳を塞いでくれ。
「さっ…真田君……」
彼女の体が震えている。俺を恐れて、震えている。
そう、こんな顔が見たかった。
ああ、この目を潰してくれ
「真田くっ…」
柔らかい唇に噛み付くように口付ける。
彼女の体が強張り、逃げようともがく頭を壁へと押し付けるように
ますます深く舌を絡めた。
彼女に告白をされ、それを受け入れ
自分でも信じられない程のスピードでに惹かれていった。
触れたいという欲求
独り占めしたいという欲求
それが芽生えるのに、そう時間はかからなかった。
そして俺の心に、
傷つけたくない 泣かせたくない
という思いが生まれる。
そして
傷つけたい 泣かせたい
矛盾した感情も、芽生えていった。
ずっと重ねたいと願っていた唇に荒々しく吸い付き
生暖かい口内を犯す。
呼吸をすることも許さない接吻に
彼女の表情が歪んでいく。
逃げようともがく体も、俺の大きな体に覆われれば効力などない。
長い長い口付けの果て、脱力しきってしまった彼女の瞳に写る自分の姿を見る。
彼女を欲している自分。
そうだ。今すぐ、彼女が欲しい。
「はぁっ… はぁ… 真田、くん…」
二人の唾液に濡れた唇。
俺の掌の中に納まった手首は、隙を見ては逃げるタイミングを探っている。
しかし力を失ってしまった彼女の体は
抵抗しようにも逃げ切れない。
黒く染まった感情は俺の理性の先を行き、
と俺の関係を案じるよりも早く、
彼女の体に触れてしまう。
「真田くん…あの… きゃっ」
言葉を遮るように、白い首元に顔をうずくめた。
強く吸い付き痣をつけながら、ようやくの手首を開放する。
赤々とした跡。弱々しい掌は俺の肩を押すが
所詮無駄な抵抗。彼女もそれはわかっているはずだ。
ブレザーを床に捨て、荒々しくシャツを脱がせる。
彼女の抵抗は強まるが、俺の心は決まっている。
「やっ、やめて、真田く…真田くん！」
肌蹴たシャツの中に覗く、青白い肌。
白い下着の上から形の良い膨らみを揉み解し
探り当てるように中心部を親指で押す。
の体がピクンと強張り、小さく喉が鳴る。
俺の理性は、ガタガタと音を立てて崩れていく。
「……………」
不意につぶやいていた彼女の名前。
彼女の瞳が揺れた。
俺への想いとモラルの間で揺れる彼女。
そして、俺の指先に翻弄されながら羞恥に耐える彼女が
たまらなく愛しく、もっと鳴かせたいと思った。
乱暴に下着をずりあげ、熱の集中している突起に子供のように吸い付く。
「あぅ… や、やぁっ！！ さな、だ…くっ…！！ やだ！ やだぁ！」
ますます火照る白い肌。
彼女の足ががくがくと震え出し、
甘い突起に歯を当てると、ますます彼女の声が高くなる。
抵抗をするために添えられていた掌も
今では彼女の体を支えることに専念し
俺が柔らかい太ももに触れると、
は俺の体に抱きつき、激しく首を振った。
「やだっ… やだ… 真田くん… 恐い、真田くん… ダメッ…」
恐怖で崩れる瞳には涙が浮かび、
唇は濡れ、頬は火照っている。
「黙れ」
静かに言い放つと、は唇をきゅっと閉じ
ますます脅えた瞳で俺のことを見据えた。
「そうだ… それでいい…」
そうやって、俺を恐れろ 拒め
スカートの中に手を入れ、下着に手をかける。
彼女は再び暴れはじめるが、俺が睨み付けるだけで
簡単にその抵抗をやめてしまった。
頬が緩む。
彼女の脚を撫でながら身を屈め、
羞恥にぎゅっと目を閉じる彼女の下半身に指を這わせた。
「…っ…あっ…」
「淫らな体だ。拒む割に、濡れているではないか。」
「やめっ…」
割れ目に指を這わせ、彼女の性感帯を探る。
の脚はますます震え、探り当てた突起に強い刺激を与えると
ついに彼女は崩れた。
壁にもたれながらずるずると脱力するの足の間に
すかさず自分の体を入れ、大きく開脚させる。
「真田くっ… ダメ… 恐い… 嫌…」
青白い月に照らされる彼女の顔を濡らす涙は、
ますます妖艶に光を帯びている。
スカートをまくり、下着を下ろす俺の腕を
両腕で阻止しようとしても
彼女の抵抗はどこか弱々しい。
「本当に嫌だと言うのなら、本気で抵抗してみろ。
お前にそれができるか。」
「真田くっ…」
潤いを帯びた脚の中に手を入れ、蜜を掬い上げる。
彼女の腰が浮き、その様子に頬を緩めながら
俺は彼女の顔から視線を外そうとしなかった。
俺の視線に気づいたは、懸命に顔を隠す。
その恥らう姿さえも、愛おしい。
狂おしいほど、愛おしいのだ。
もっと、俺のために乱れてくれ。
指を出し入れしながら施される愛撫に続き、
彼女の入り口に直接舌を触れた。
は甘い喘ぎ声をあげながら俺の頭部に手を沿えた。
強張る指先の感覚がますます俺を刺激し
爪を立てる感触さえも心地よい。
「あぁっ、あっ… んっ、く、さなっ… 真田っ…」
吸い付き、舐め上げ、
は絶頂を迎える。
彼女の腰を引っ張り、床に体を寝かせる。
部室の窓から差し込む月光
媚薬のように俺の興奮を高め
怯えていたはずのも
その青白い光がもたらす不思議な力に誘われてか
潤んだ虚ろな瞳で俺のことを見上げた。
脱力しきった彼女の体が醸し出す
どこか神秘的なオーラ。
傷つけたい 傷ついて欲しい
乱れ 表情を歪め 俺を見つめ
濡れた唇で 嫌だと 恐いと
そう叫び、俺の体を抱きしめ
陳腐な思想か
青白く光る彼女の涙に
体が熱くなると同時に、背筋が凍る。
「真田くん…」
弱々しい声。
俺は彼女の見下ろしたまま、の唇の動きを見つめた。
「………好きだよ。」
途端、目の前が暗くなり
無心で、彼女に口付けていた。
溢れかえる欲望
肉体的にも
精神的にも
もう、抑えなど利かぬ。
「んっ… あぁっ、んんっ… は、ぁ…」
ゆっくりと進入し、
腰を前後させながら、次第にその動きを早めていく。
彼女は体を強張らせながら息をつき、
痛みに悲鳴をあげる体をなんとか落ち着かせようと
目に涙を浮かべながら拳を握っている。
思い描いた世界。
彼女が俺の下で涙を浮かべ
痛みに、快楽に悶え
俺を恐れ、
欲望が弾ければ、は俺から離れていくと思っていた。
彼女に触れれば、彼女は傷つくと信じて疑わなかった。
「……、」
「……っ… ぁ… んぁ、あああっ… ひゃっ、あああ」
言葉にできず、彼女に無心で口付けた。
愛している
この言葉が、熱を通して伝わればいい。
「すまん…」
横たわる背中
「……なんで謝るの？」
よろよろと起き上がる後姿から、目を逸らしたくなってしまう。
床に手を付きながら俺に振り返る表情が
逆光を浴び、儚く、幻想的に、怖ろしく、そして艶かしい。
「謝らないで。」
の頬に一筋の涙が伝う。
ハッとしたように頬に掌を広げるの細い腕を
俺は思わず掴んでいた。
繋がる視線、広がる沈黙
異様な空気に包まれ、抜け出せないと感じたとき
俺は彼女の体を抱き寄せ、これ以上無いくらい、強く抱きしめ
高鳴る胸の鼓動を懸命に抑えようと必死になりながら
そして、静かに彼女の肩に顔を伏せた。
終